公開展示を中止しているチンパンジーのモコイチについて、4月20日の報告に続き、公開を中止した経緯と現在の状況をお知らせしたいと思います。
チンパンジーは通常、両手の拳を地面について歩く「ナックルウォーク」というスタイルで四つ足歩行をします。しかしながら、昨年末より、モコイチにそれまでみられていた四つ足歩行がほとんど見られなくなり、代わりに両足を動かさずに両腕だけを使って移動する様子が頻繁に見られるようになりました。この移動方法は産まれて間もない時はよく見られますが、この年齢で四つ足歩行がみられないのは異常です。加えて、体が大きくなるのも遅いのではと気になっていたので、県外のチンパンジー飼育園に問い合わせたところ、やはり同年代のコドモに比べかなり体格が小さいという事がわかりました。それまでしばらく親子・群れの関係性を重視し、注意深く観察していましたが、次第に食欲低下や、呼吸が荒くなり舌や口の中が紫色になる様子が時々確認されるようになったため、検査のため入院させ、人工保育に切り替えることにしました。
現段階のモコイチの症状は、くる病を含め、いろいろな病態が組み合わさっておきているものと考えています。くる病の他には発育障害や先天性疾患、代謝障害などを疑っており、現在精査中です。人工保育及び検査・治療については、チンパンジーの人工保育の経験のある他の動物園の方々をはじめ、専門家、小児科医、ヒトの超音波技師の方々にも協力をいただいています。チンパンジーとヒトは同じヒト科で色々な面で似通っているので検査や診断治療はヒトの医療が大変参考になります。
そして今、人工保育を開始して3か月ほど経ちました。現在のモコイチの症状は改善傾向にあります。食欲が回復し、体重も増加しました。呼吸状態にも改善がみられ、歩き方は正常な様子にまで回復しつつあります。このことをとても嬉しく思うと同時に、母親と離れた環境で塞ぎこんだりすることもなく、私たちの元で元気に成長してくれているモコイチに感謝の気持ちでいっぱいです。
今後は、検査・治療をすすめながら、お母さんに戻す練習もしていく予定です。そして、早くお母さんのモコとココおばさんの元に戻って、毎日健康でチンパンジーらしく過ごせるよう、スタッフ一同、日々努力してまいります。
2022/6/23