こどもの国日誌

2021/7/30
ワンダーミュージアム

第16話:おばけナイトミュージアム②おばけせいさくじょについて[ワンダーミュージアムをつたえるためのコラム]

こんにちは。沖縄こどもの国でワンダーミュージアムを担当している鈴木です。現在ワンダーミュージアムではリニューアルに向けた計画づくりが進められています。これまでの17年間の積み重ねと未来可能性を混ぜ合わせてパワーアップしていくことを目指すリニューアル。そのためには何が大事で何が必要なのかを議論し検討しています。実はその中でご指摘いただくのが「良いことをやっているかもしれないけど伝わってない」ということ。暗黙知のままではいけない。言語化していかないと伝わらない。17年間走り続けてきたなかでワンダーミュージアムが大事にしてきたこと、これからも大事にしていきたいことなどを連載でお伝えしています。



第16話:おばけナイトミュージアム②おばけせいさくじょについて

いつのまにかワンダーミュージアムの夏の風物詩といわれるまでになった「おばけナイトミュージアム」。2011年にスタートしたので今年でなんと10年目。本来であれば夏休みのはじまる7月後半からスタートするはずでしたがそれもかなわず。コロナ渦で様々な制限の中で試行錯誤を続けていますが、改めておばけナイトミュージアムはこれからどうしていくべきなのかということを考えています。

私たちが大切にしているおばけナイトミュージアムは人手と手間と時間がかかります。でもそれ以上に大切なこともたくさん詰まっています。ただのお化け屋敷とはちがうからこその苦労と魅力。リニューアルをきっかけに様々な事業のスクラップアンドビルドが検討されているなかでおばけナイトミュージアムが今後どうなっていくのかまだわかりませんが、どちらにせよこれまでやってきたことや大事にしてきたことをちゃんと言葉にして残しておくことは大切なことだと思ってます。

ということでおばけナイトミュージアムのお話も一話には収まりそうにないので、ちょっと気合を入れて5回にわけてお話しをさせていただきます。①おばけナイトミュージアムのはじまりについて。②おばけせいさくじょについて。③おばけせいさくについて。④おばけナイトセレモニーについて。⑤おばけナイトミュージアムについて。

ここで大人の皆さんにお願いがあります。この企画はこどもたちの想像から広がる世界観を大切にしたいので、ここで書かれたことは大人の皆さんの胸のうちに留めていただきたいのです。何卒よろしくお願いいたします。

ということで今回は②おばけせいさくじょについて。

おばけせいさくじょはこどもたちがおばけを思い描く場所。この場所で生まれたおばけたちが夏休みのおばけナイトミュージアムに遊びにやってきます。


もしも ここにおばけがいたら・・・想像してみて
沖縄に暮らす、沖縄のおばけ
おばけのかお おばけのからだ おばけのきもち
どんな姿をしてる? どんなカタチ? どんな色?
きみが想像するおばけが 夏の夜 ここにあそびにくるかも

おばけせいさくじょの入口にあるこのメッセージ付きののれんを一枚一枚くぐりながら、こどもたちはおばけの世界に近づいていきます。時々お化け屋敷と間違えて入口で尻込みしてしまう子がいるのですが、おばけせいさくじょではこどもたちの想像を引き出すために場所の力・空間の力をとても大事にしています。中に入ると小さな机がたくさんあって用意されたおばけせいぞう用紙に想像したおばけのことをそれぞれ自由に描くことができます。おばけの名前、おばけのとくいなこと・にがてなこと、おばけのくちぐせ、どうしておばけになった?、そしておばけの全体図。描き終えたらそうぞうポストと呼ばれるポストに投函してせいさく終了。春休みに開催しているプログラムですが、わずか2~3週間で1000~2000のおばけたちが集まります。


こどもたちの想像を引き出すこのプログラムで大切にしていることがあります。それはこどもたちが日常の中で見たことや感じたことから自由に想像を広げ自由に描いてもらうこと。時におばけを通してこどもたちが心の奥にしまっているモヤモヤを垣間見ることもあります。そしておばけを通してこどもたちの優しさや鋭い眼差しを感じることもあります。以下は2013年7月3日の琉球新報に掲載されたコラム金ロ木舌。ぜひ多くの方にお読み頂きたいので引用させていただきます。

奇抜な表現に思わず噴き出してしまった。的確な批評眼にはうならされた。沖縄こどもの国が夏休みの催事に向けて募集したお化けの絵を見てのこと。子どもの観察力と想像力に感服しることしきり。「パパおやじ」と名付けられたお化けには髪の毛が薄い父親の姿が投影している。得意技は「サラリーマンえいぎょう」で、 苦手は「とつぜんの休み」という書さ込みを添えた。口癖は「かしこまりました」。正反対なのが「ドキドキおばけにいと」。ニートという言葉に着想を得たようだ。このお化けは昼寝が好きで働くのが苦手。忙しいふりをするのに忙しいという。家族にモデルがいるのだろか。8歳の子が描いた「黒男」というお化けには胸を突かれた。顔を始筆で塗りつぷし、周囲には紙幣や硬貨が描かれている。「かおがない」の添え書さも。金銭的利益を追求するあまり自己を失った大人への警告とみたお化けになったわが身を想像してみた。連日、深夜帰宅の「酒気帯びお化け」か、週末は昼まで布団から抜け出せぬ「ぐうたらお化け」が相場か。人気者にはなれそうにない。お化けとは夏の夜。現実社会では政界夏の陣とくき参院選の公示があすに迫った。政治家の公約の軽々しさにうんざりさせられる昨今、「口製き」ならぬ 「ロ先お化け」の出没は御免被りたい。子どもたちも見てますぞ。

おばけナイトミュージアムを通してこどものもつ想像力の豊かさに多くの人たちが気付きこどもたちの自由な発想やこどものもつ視点に光があてられるようにしたい。こどもってすごい。こどもの想像って面白い。こどもの視点って鋭い。そこに大人をはじめとした社会が気付く。おばけナイトミュージアムを行う意味や意義はそこにある、と信じています。「奇抜な表現に思わず噴き出してしまった」「的確な批評眼にはうならされた」そんなふうに感じてくださった琉球新報さんのコラムは私たちにとって大きな大きな励みになりました。


実は少し前、こどもたちがおばけを考えるのに苦労しているようだからおばけせいさくじょではおばけのテーマやお題を与えた方がよいのではないか、という意見が出たことがあります。こどもも大人も窮屈な社会の中にどっぷりとつかっていると、なんでもいいという「自由」を突然与えられたり、あなたが思い描く「想像」を突然求められたりすると躊躇してしまいます。でもここでは描かなくてもよいという自由も選択肢もあるということを私たちは忘れてはいけない。一方でフタをしてしまったトビラを開け凝り固まった心を解きほぐすということも忘れてはいけない。たとえばスタッフのプレイヤーでもいい保護者でもいい共有し分かち合う大人が側にいることでこどもの感性は伸びて広がっていくのではないでしょうか。そんなふうに大切なことを守りつつも多様な状況に合わせて柔軟に対応していくことができるといいなと思っています。

近年、特に今年のおばけたちはおとなしいというか現実的というかなんだか少しパワーが弱いようなそんな印象を受けています。コロナ渦の影響でしょうか。正解にとらわれず自分が感じたことや面白いと思えるものにまっすぐであってほしい。そんなこどもたちのフィルターを通って社会を映し出すような、そんなおばけたちに出会えるおばけの世界をこれからも作り続けていくことができればと思います。


過去のコラムは以下でご覧いただけます。
https://www.okzm.jp/diary/wonder/